千切っては投げ

かつてはテキストや漫画読み、漫画描き。今はほとんど将棋です。

横断歩道の白いところ

横断歩道では白いところを踏んで渡ろうとしたことは誰でも一度はあるだろう。
何故そうしてしまうのか?古来、街、ひいては地(土地)を隔てるものは河であった。河の流れる方向である下流は海へ続く。(海が「この世」から「常世」「黄泉」「死者の国」へ通ずることは海洋国家に共通する観念であることは広く知られたところである。)
時を経て設計された古都などには「大路」があり、大路は内方向には神(または征服者)へ続き、反対は都の外へと続く。都は呪術によって「この世」を活性化させる「装置」であるから、都の外は当然その反対である「常世」「黄泉」「死者の国」へ続くことになる。つまり大路は死へ続く。大路は都内の「死」を外へ流す。そして、この大路という河を渡るためものは「橋」である。だが当時は生と死は避けられぬ、隔てられぬ、身近なものであったため、「大路」に「橋」は存在しなかった。しかし、「死」を遠ざけようとするのが現代である。
この観念が我々日本人の根底に流れているため、現代の「大路」を渡るための「橋」の一つである「横断歩道」の「白いところ」を無意識にも踏んで渡ってしまうのである。